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2010/03/11

映画「フロスト×ニクソン」を観ました

2009年に日本で公開された「フロスト×ニクソン」をDVDで観ました。

1977年に放送されたイギリスの司会者デヴィット・フロストによる元アメリカ合衆国大統領リチャード・ニクソンのインタビュ番組を2006年にピーター・モーガンが舞台化したものを元に、ロン・ハワード監督が映画化した作品。

イギリス、オーストラリアのテレビショウで活躍するフロストは、74年、テレビでのニクソン大統領辞任会見の視聴率に興味を持つ。この全世界の注目を集めた会見から、アメリカ国民がその詳細と謝罪を求める男ニクソンへのインタビュを行うことができれば、アメリカのテレビ業界へ復帰できると考えた。
また、ニクソンは引退後の生活から汚名を漱ぎ、政界への復帰をも狙い、このインタビュを利用することを考える。
4回に及ぶインタビュは、カメラを前にした、言葉による決闘の場となる…。

すばらし映画です。まだ観ていない方は、観た方が良いでしょう。
何がすごいかというと、演出と演技です。物語は、最後にニクソンが落ちるというところに向けて進行する構成で、特に事件について知らなくても、必要な知識は、最初の15分まででまとめられています。
ワタクシは、日本語以外の言語を解しませんので、これまで演技の巧緻を述べたことはないのですが、この映画の演技は言葉以外の部分にもあり、それが映画の面白さの根幹であるという、すごい映画です。逆に考えると、この眉の上げ下げ一つにも意味があるような物語を舞台でやっていたのが驚きです。アップにした表情をみることができる映像化に思い至ったことが、すばらしいです。

90分あたりの一本の電話、ここの場面をこの時間帯でもってくるのはニクい演出です。
バラシちゃいますが、それまでインタビュをすること自体に名声を賭け、その内容には感心を払わずに金策に奔走し、事件の真相を追究しようとする自らのスタッフと反発し合い、ニクソンにやり込められていたフロストに、4回目、最後のインタビュの前に、ニクソンが電話をかけるんです。内容は、良家に育った者に対する憧憬と反骨の共有と、インタビュによって光が当たるのはどちらか一人であるというフロストに対する挑発です(ここは、ニクソンの副大統領時代から、一回の落選を含む大統領就任までの状況を知っているとさもありなん、となるところです)。
これによりフロストは危機感から最後のインタビュに逆転をかけるわけですが、その収録の前、昨日の電話についてフロストがニクソンに話かけるのですが、このことをニクソンが覚えていないのです。この時の顔が、「あぁ、いま落ちたなぁ。」と見てわかるという演技。

100分あたりの「大統領がやるならば、非合法行為であっても合法である。」という言葉を引き出したあとのニクソンの、政治への復帰が不可能であるという心情の吐露と、やつれ、老けこんだその顔。
アクション映画の最後の大立ち回りよりも興奮する大団円でした。

以前にもこのブログで、アメリカの大統領職の「国父」としての存在を書きましたが、ニクソンにその光がなく、厳格な能吏で外交手腕が卓越した人物であったのは事件(ウォーターゲート事件)以前から認められていましたが、その後、アメリカの大統領史上、唯一任期途中に辞任した大統領となってしまいました。
当時の批判は、国民を欺き、さらに訴追を逃れた者に対し、真相の究明と釈明にあったので、それを行わなかったニクソンへの怒りは続き、全キャリアの否定につながってますが、近年は個別に評価され直しています。
史実なのかどうかがわかりませんが、あの電話の件は、決して間違いを起してはいけない公職と、謝ってしまった方が楽であると思えるような状況下の個人の相克であったでしょう。

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