結論から言うと問題ではあります。
しかし、「経済成長か、財政の再建か」という二元論に縛られて身動きが取れないような硬直した状況が何十年も続いていることが異常であり、日本の累積債務問題を解決することが実態以上に困難であり、重要であるように捉えられていると考えます。
2011年度にも、日本の国と地方の債務の合計が1,000兆円を超えることが見込まれます。日本のGDP(国内総生産)の2倍にあたります。債権はほぼ国内の投資家(銀行・保険会社)と個人が購入しており、投資家の元手も日本国内の貯蓄を元にしており、その貯蓄が1,400兆円と推定され、数年以内に債権の引受先が枯渇することも考えられます。
本年1月27日に海外の格付け会社スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(S&P)が、アウトルックは安定的で、外貨建て・自国通貨建て短期ソブリン格付けはA1+に据え置きつつ、長期ソブリン格付けをAAからAA-に引き下げたのは、この状況を反映しています。
Ⅰ.数年前までは、借金といっても企業とは違い国が無くなるわけではない、というので歳出の拡大による景気刺激や、福祉の拡充を訴える方もいました。確かに国は無くなりませんが、北海道の夕張市の財政が破綻して以降、このような声は聞かなくなりました。財政の破綻は、支出のうち、削減できる以上の額を借金が占める状態で、どんなに高い利率をつけてもカネを貸してくれる人がいない、ということです。ただ、最後の貸し手として、地方公共団体ならば国、国ならばIMF(国際通貨基金)がありますが、取り立てがキビシい。支出(住民サービス)は減り、収入(税金)は増やそうとするので、転居して出て行かれる方もいます。国は無くならないが、人がいない国は国として成立しないですよね。
Ⅱ.1,000兆円という規模が、実体よりも過大に評価されているという方もいます。企業会計における貸借対照表(バランスシート B/S)の考え方から、資産から負債を引いたのが実質の負債で、これは300兆円ほどであるということです。資産というのは国有地や国の持つ証券もあれば、道路・国の年金や保険の積立も含みます。これは事実ですが、額の多寡によって対応が異なる、とする主張は違います。カネを貸す側は、貸した金が返ってくると信じられるから貸すわけで、どんなに高い金利が付いてもカネが返ってくるか判らないなら、カネを貸しません。支出を借金で賄っている以上、元の借金の額の大きさに関係なくカネは借りれなくなり、支出は元の借金の金利を含め、収入の範囲内で賄うしかなくなります。
Ⅲ.デフレ(相対的にカネの価値が高まり、モノの価値が下がる)から脱却し、インフレ(デフレの逆)に誘導すればいい、という方もいます。確かにインフレ率が債権の金利を上回れば、問題はなくなります。このあたりは判りにくいですが、Ⅰ.の論拠ともされ、カネを作っているのは国で、国が多量にカネを作れば、カネの価値を下げることができます。カネの価値が下がれば、借金の価値も下がるわけで、例えば明日1万円の収入があるからといって今日1万円を借り、明日カネの価値を半分にして、カネの価値が半分になったからといって収入を2万円受け取り、借りた1万円を返す、ということです。ただ、この場合、借りたカネでモノを買い、しかもそのモノが、カネの価値が半分になったから今日から倍の値段だ、ということになれば、取引する額が倍になっただけで、総体は変わりません。つまり支出を借金で賄っている以上、状況は変わらない、ということです。
国がカネを作っており、借金をするのも国だから、多量にカネを作ってばら撒き、そのカネを受け取った人から借金をすればよい、という考えもありますが、同様に取引する額が大きくなるだけで、総体は変わりません。
Ⅳ.経済成長が解決する、という考えもあります。確かに、GDPの名目成長率が債権の利率を上回れば、問題は無くなります。これも判りにくいですが、経済が成長すれば、国の財布に入るカネの額が大きくなり、元の借金の額の大きさが相対的に小さく、気にならなくなる、ということです。しかし、日本だけでなく、先進国の成長率は総じて低く、日本の潜在成長率は1~2%とされ、現在財務省が見込む長期国債の代表的利率が2%と考えれば、無理が生じます。
話が長くなりましたが、累積債務に対する考え方が色々あるように見え、その対処法が対極のようであるために解決法を見出せない、という現在の状況を否定したかったのです。
つまり、最低限単年度の歳出を歳入で賄うことが解決の方法である、ということです。22年度一般会計予算での国債発行は約44兆円、このうち、借換債(過去の債務と利子を新たな債務により賄う)が24兆円強、残り19兆円強が新たに追加される債務です。この19兆円強分の歳出を削減すればいい。
当然借換債を充てている債務利子は現行低率とはいえ、雪だるま式に増えていくものですが、これは次の段階で考えればいい。この分も含め、元本は突発的な収入を充てます。突発的な収入とは、それこそ「霞が関埋蔵金」というような過剰な留保金を取崩したものを想定します。
偉そうに述べていますが、これは、国の財政運営の基本方針で、既に存在するものです。20年以上、景気浮揚だ、といって国債を発行しているので見ない振りをされているだけのことなんですね。
前国会に自民党が「財政健全化法案」を作成し、今国会でも提出を考えています。内容は、国の歳出に上限を設け(歳出キャップ)、新たな歳出項目や減税策を作成する場合は既存の歳出を削減してそれに充てる(ペイ・アズ・ユー・ゴー)ことを求めるものですが、これは90年代の自民党橋本内閣時代から実施してきたものの何度目かの焼き直しで、小泉内閣の時代は、これに事業廃止・縮小による歳出削減を加え、いいところまで行ったのですが、以降小泉内閣時代の政策が「弱者切り捨て」にあたるとして不評になり、また法案を作ったというところで、またぞろこれでは足りない。ただ、事業廃止・縮小では、当然それによって助かっている方もいるので、総論では賛成でも各論は反対が多く、決められない政治状況の今では、話が進みません。
ワタクシが考えているのは、「財政健全化法案」の中に、事業を廃止・縮小せずに行政サービスの維持を義務付けつつ、国の歳出一般・特別会計合わせて200兆円強から、毎年1%の経費削減を10年間行う条項を追加することです。これなら総論だけですから合意しやすいですよね。毎年2兆円で10年で20兆円弱の削減ですね。金額がとんでもなく大きいので不可能と思われるかもしれません。しかし、一般の企業に勤めていらっしゃる方なら、売上維持しつつ予算の1%削減というのは誰でも経験があるのではないでしょうか。要はやるか、やらないか、で、各官庁に、自部署の削減が未達の局長以上の昇進を認めないと法案化し、与野党合意で立法化すれば、与党が変わっても実行しなければいけないということになります。
これで、当面の累積債務問題にケリをつければ良い。確かにこの他に毎年増大する社会保障費への国費投入という問題もありますが、これは社会保障の各項目毎、個別に解決するべきです。国費といっても元は税金ですから、あくまで個人が払った分と給付のバランスの問題です。
上記した通り、財政の運営の基本は、国債に頼らない、ということです。
しかし、60年代以降の成長期に、その成長の原資として国や地方の財源を作るため、国債ではない債権が多数用意されました。建設国債や財投債、融通債や機関債と呼ばれるもので、特別会計の債務が発行の実体が見えないまま累積しているものがあり、それが1,000兆円の中に入っているのか判りません(入っていると思いますが)。よって、ここを透明にすることが次の解決すべき問題ということになります。
行政は無駄な事業をやっている、独立行政法人を廃止して流れているカネを止めないと、国・地方公務員の給与が高すぎる、と問題を挙げていく方がいらっしゃいますが、それぞれ各問題であることは、その通りです。ただ、現状の政治状況は全く決められない・実行できない状態であるので、問題を繋げて拡散するのではなく、個別に切り分けて対処を明確にし、合意できるものから合意、実行できるものから実行することが何より必要なのです。
しかし、「経済成長か、財政の再建か」という二元論に縛られて身動きが取れないような硬直した状況が何十年も続いていることが異常であり、日本の累積債務問題を解決することが実態以上に困難であり、重要であるように捉えられていると考えます。
2011年度にも、日本の国と地方の債務の合計が1,000兆円を超えることが見込まれます。日本のGDP(国内総生産)の2倍にあたります。債権はほぼ国内の投資家(銀行・保険会社)と個人が購入しており、投資家の元手も日本国内の貯蓄を元にしており、その貯蓄が1,400兆円と推定され、数年以内に債権の引受先が枯渇することも考えられます。
本年1月27日に海外の格付け会社スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(S&P)が、アウトルックは安定的で、外貨建て・自国通貨建て短期ソブリン格付けはA1+に据え置きつつ、長期ソブリン格付けをAAからAA-に引き下げたのは、この状況を反映しています。
Ⅰ.数年前までは、借金といっても企業とは違い国が無くなるわけではない、というので歳出の拡大による景気刺激や、福祉の拡充を訴える方もいました。確かに国は無くなりませんが、北海道の夕張市の財政が破綻して以降、このような声は聞かなくなりました。財政の破綻は、支出のうち、削減できる以上の額を借金が占める状態で、どんなに高い利率をつけてもカネを貸してくれる人がいない、ということです。ただ、最後の貸し手として、地方公共団体ならば国、国ならばIMF(国際通貨基金)がありますが、取り立てがキビシい。支出(住民サービス)は減り、収入(税金)は増やそうとするので、転居して出て行かれる方もいます。国は無くならないが、人がいない国は国として成立しないですよね。
Ⅱ.1,000兆円という規模が、実体よりも過大に評価されているという方もいます。企業会計における貸借対照表(バランスシート B/S)の考え方から、資産から負債を引いたのが実質の負債で、これは300兆円ほどであるということです。資産というのは国有地や国の持つ証券もあれば、道路・国の年金や保険の積立も含みます。これは事実ですが、額の多寡によって対応が異なる、とする主張は違います。カネを貸す側は、貸した金が返ってくると信じられるから貸すわけで、どんなに高い金利が付いてもカネが返ってくるか判らないなら、カネを貸しません。支出を借金で賄っている以上、元の借金の額の大きさに関係なくカネは借りれなくなり、支出は元の借金の金利を含め、収入の範囲内で賄うしかなくなります。
Ⅲ.デフレ(相対的にカネの価値が高まり、モノの価値が下がる)から脱却し、インフレ(デフレの逆)に誘導すればいい、という方もいます。確かにインフレ率が債権の金利を上回れば、問題はなくなります。このあたりは判りにくいですが、Ⅰ.の論拠ともされ、カネを作っているのは国で、国が多量にカネを作れば、カネの価値を下げることができます。カネの価値が下がれば、借金の価値も下がるわけで、例えば明日1万円の収入があるからといって今日1万円を借り、明日カネの価値を半分にして、カネの価値が半分になったからといって収入を2万円受け取り、借りた1万円を返す、ということです。ただ、この場合、借りたカネでモノを買い、しかもそのモノが、カネの価値が半分になったから今日から倍の値段だ、ということになれば、取引する額が倍になっただけで、総体は変わりません。つまり支出を借金で賄っている以上、状況は変わらない、ということです。
国がカネを作っており、借金をするのも国だから、多量にカネを作ってばら撒き、そのカネを受け取った人から借金をすればよい、という考えもありますが、同様に取引する額が大きくなるだけで、総体は変わりません。
Ⅳ.経済成長が解決する、という考えもあります。確かに、GDPの名目成長率が債権の利率を上回れば、問題は無くなります。これも判りにくいですが、経済が成長すれば、国の財布に入るカネの額が大きくなり、元の借金の額の大きさが相対的に小さく、気にならなくなる、ということです。しかし、日本だけでなく、先進国の成長率は総じて低く、日本の潜在成長率は1~2%とされ、現在財務省が見込む長期国債の代表的利率が2%と考えれば、無理が生じます。
話が長くなりましたが、累積債務に対する考え方が色々あるように見え、その対処法が対極のようであるために解決法を見出せない、という現在の状況を否定したかったのです。
つまり、最低限単年度の歳出を歳入で賄うことが解決の方法である、ということです。22年度一般会計予算での国債発行は約44兆円、このうち、借換債(過去の債務と利子を新たな債務により賄う)が24兆円強、残り19兆円強が新たに追加される債務です。この19兆円強分の歳出を削減すればいい。
当然借換債を充てている債務利子は現行低率とはいえ、雪だるま式に増えていくものですが、これは次の段階で考えればいい。この分も含め、元本は突発的な収入を充てます。突発的な収入とは、それこそ「霞が関埋蔵金」というような過剰な留保金を取崩したものを想定します。
偉そうに述べていますが、これは、国の財政運営の基本方針で、既に存在するものです。20年以上、景気浮揚だ、といって国債を発行しているので見ない振りをされているだけのことなんですね。
前国会に自民党が「財政健全化法案」を作成し、今国会でも提出を考えています。内容は、国の歳出に上限を設け(歳出キャップ)、新たな歳出項目や減税策を作成する場合は既存の歳出を削減してそれに充てる(ペイ・アズ・ユー・ゴー)ことを求めるものですが、これは90年代の自民党橋本内閣時代から実施してきたものの何度目かの焼き直しで、小泉内閣の時代は、これに事業廃止・縮小による歳出削減を加え、いいところまで行ったのですが、以降小泉内閣時代の政策が「弱者切り捨て」にあたるとして不評になり、また法案を作ったというところで、またぞろこれでは足りない。ただ、事業廃止・縮小では、当然それによって助かっている方もいるので、総論では賛成でも各論は反対が多く、決められない政治状況の今では、話が進みません。
ワタクシが考えているのは、「財政健全化法案」の中に、事業を廃止・縮小せずに行政サービスの維持を義務付けつつ、国の歳出一般・特別会計合わせて200兆円強から、毎年1%の経費削減を10年間行う条項を追加することです。これなら総論だけですから合意しやすいですよね。毎年2兆円で10年で20兆円弱の削減ですね。金額がとんでもなく大きいので不可能と思われるかもしれません。しかし、一般の企業に勤めていらっしゃる方なら、売上維持しつつ予算の1%削減というのは誰でも経験があるのではないでしょうか。要はやるか、やらないか、で、各官庁に、自部署の削減が未達の局長以上の昇進を認めないと法案化し、与野党合意で立法化すれば、与党が変わっても実行しなければいけないということになります。
これで、当面の累積債務問題にケリをつければ良い。確かにこの他に毎年増大する社会保障費への国費投入という問題もありますが、これは社会保障の各項目毎、個別に解決するべきです。国費といっても元は税金ですから、あくまで個人が払った分と給付のバランスの問題です。
上記した通り、財政の運営の基本は、国債に頼らない、ということです。
しかし、60年代以降の成長期に、その成長の原資として国や地方の財源を作るため、国債ではない債権が多数用意されました。建設国債や財投債、融通債や機関債と呼ばれるもので、特別会計の債務が発行の実体が見えないまま累積しているものがあり、それが1,000兆円の中に入っているのか判りません(入っていると思いますが)。よって、ここを透明にすることが次の解決すべき問題ということになります。
行政は無駄な事業をやっている、独立行政法人を廃止して流れているカネを止めないと、国・地方公務員の給与が高すぎる、と問題を挙げていく方がいらっしゃいますが、それぞれ各問題であることは、その通りです。ただ、現状の政治状況は全く決められない・実行できない状態であるので、問題を繋げて拡散するのではなく、個別に切り分けて対処を明確にし、合意できるものから合意、実行できるものから実行することが何より必要なのです。
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