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2011/09/17

政府・日銀による円高対策に本当に必要なもの

2011年、日本の円は過去最高値を更新することになりました。
東日本大震災直後は、日本企業が震災の対策のために、手持ちの外貨を円に変えるという思惑により円高になったものを、欧米と協調した外為市場への介入により鎮静化させました。
8月4日には、アメリカの債務上限撤廃問題でアメリカ国債の格付低下方向が示されたためドルが急落、4.5兆円という過去最大規模の単独介入を行いましたが、効果が5日ほどで剥落し、円高方向に振れたところにギリシャの債務問題に再び脚光があたりEUのユーロが売られ(ドルでユーロを買っていた人がユーロを売って円を買ったわけです)、同19日のニューヨークの外為取引市場で円相場が一時、過去最高値を更新しました。
その後1カ月程は1ドル77円を挟んだ動きで膠着しています。

通貨の高低とは何か、というと1国の通貨の需要と供給、為替になると2国それぞれの需要と供給、そしてその差、ということになります。
こう書くと解りにくいですが、その通貨の需要があるということはその国の財政や経済が信頼されている証であり、自由な市場でやりとりされることを考えるならば、適切な値というのが無い、もしくは時々刻々と変化するものであるということは想像できます。
また、為替により2国の通貨を交換して初めて通貨の高低を意識することになり、通貨の出入で大幅な損益が発生しないのが望ましい状態ですから、本来問題であるのは通貨価値の大幅な高低であり、過去最高・最低値をつけることではありません。
上記からすると、円高が問題だとするならば、急激な円高は問題ですが、長期の傾向が円高であることは問題にはなりません。この日本政府・日銀の認識のズレが第一の論点です。第二の論点は、それでも円高になれば国内のモノ・サービスを海外に持っていくと(輸出すると)以前と比較して割高になり、それを防止するために海外での価値を維持するので、相対的に国内での価値が下がることです。
以下は第一の論点について述べ、第二の論点は後ほど述べます。

さて、第一の論点ですが、長期の傾向を是正しようとしても無駄である、というのが結論です。
まず為替への介入に使われる手法として、短期の効果を狙うものに(日本の場合は)政府による市場への直接介入と、中期の効果を狙うものに(同)日銀による金融緩和(短期金融市場利率の低下、通貨供給量の増大)があります。
両手法とも理論的には正しい方法なんですね。ですから各国でも自国の為替を誘導したいときに使われる手法なのですが、これでは長期の傾向を是正することはできない、ということをまず立証します。ちなみに市場の動きについて述べているのは実需についてではなく、実需を想定した投資の動きを念頭に於いています。

為替市場への直接介入については、2国間の為替が相対的にどちらかが高いことが問題であると双方が考えなければならない、つまり2国が協調して介入しなければ意味がない、ということです。
片方だけが問題であると考えているときにその国が介入しても相手国が問題ではないと考えているわけですから、最悪相手国は逆介入し効果を相殺してくることも想定されます。相手国が介入を容認・静観した場合は、相手国が協調する必要がないと判断したわけですからその効果に限界があります。
今の現状は、日本以外の主要国に、冒頭述べた災害による緊急時のようなもの以外協調する気はありません。もともと自由市場で取引されるものは市場に任せるのが主要国の立場ですし、日本の円はドル・ユーロ・ポンドと並んで主要通貨と認識されていますから、日本の思惑だけで市場を操縦することはあってはならない、ということになります。それよりも円が買われるというのはその国が評価されている、国の財政が(相対的に)健全で経済の収支も(相対的に)入超であるというのが理由なのだから、国際的には財政支出や減税で国民に還元して消費を喚起して輸入を増やす、海外に投資する、つまり相対的に増えたおカネを海外に還流することが解決の方法である、という認識です。
今の日本は、国として世界中を見ても深刻な財政赤字を抱えていますが、それでも円高に振れるのは、日本の財政はこれまでもあった膠着している問題、アメリカ・ヨーロッパの国の財政問題は新しいもので対処を誤る可能性を意識している、という解説が主流です。経済は震災後赤字が続きましたが6月以降微力ながら持ち直したと認識されており、これが材料になって円が買われる結果になっています。
以上に加え、利差を狙った投資資金に介入を見越した取引をされていることも考えられます。投資資金が円高に誘導して国内の声に押された政府が介入し、円安に振れた差を利益として吸い取られ、再び円高に戻るという市場の動きで、ヘッジ取引がそれを可能にしています。世界には為替取引で100~200兆円規模の投資資金が動いているといわれていますから、上記した日本単独の介入金額の4.5兆円などは微々たるものです。しかも日本政府は国内の声に抵抗できないと足元を見られていますから、確実に勝てるチキンレースで勝負しているようなものと思われているでしょう。毎回負けている日本政府は損を重ねています。
8月24日に発表された政府の「円高対応緊急パッケージ」は円高に効果がない、と考えられていますが、直接的な効果を狙ったものではなく、上記した海外への還元を促進させようとするものです。

では、金融緩和について考えます。
銀行は日常の業務に必要なおカネ全てを手元に用意しているわけではないです。必要に応じて他の銀行から短期の借入を行い業務を行うわけですがこれが短期金融市場であり、日銀はこの金利を指標として操作し、通貨の流通量を調整します。日本では2000年代以降0%強に張付いており、これ以上の緩和措置がとれないことから、希望する銀行から保有する債権を買取り通貨供給量を増やす量的緩和策がとられることになりました。銀行がその気になれば、極小の金利であらゆる人・企業におカネを貸せるので、需要以上に円が溢れ価値が低下し円安に動く、おカネの価値が下がりモノの値段が上がることでデフレ脱却、経済が活発になり景気が上昇する、ということです。
しかしご存じの通り、円安の傾向にはならず、デフレも続き、景気が上昇した実感もないままです。
これにはおカネの供給を増やす金額が中途半端であるとか、目的によっては供給したおカネを吸収しているから供給量が増えていない等、理論は正しいのに行動が伴っていないから効果が出ないと考える方もいらっしゃいます。
ただ、実際に大量のおカネを溢れさせ、これぞまさしく量的緩和策というものを実施した国があるわけです。
アメリカで2011年11月から約半年間に渡って実施されたQE2と呼ばれるもので、この間約60兆円をばら撒きました。その効果の検証は、もう少し後に研究されるでしょうが、実感としては、比較的好調な経済状態の新興国の通貨と、確実に需要がありながらもマーケットが小さい資源への投資に使われ、そこから派生する株式や為替の下支えにはなったものの弊害が大きく効果は薄かったと思います。
つまり、供給したおカネの使い方は、極小の金利を付ける以外制限がないわけですから、国内の投資に向かわなかったわけです。投資や貸付をしようにも回収の見込みが立つ案件が少なければそうなりますよね。
為替を下支えしたと書きましたが、円やユーロに対するドル安の度合いを考えるなら、2011年7月末からの債務上限撤廃問題がこじれた時の方がよっぽど影響がありました。デフレ懸念があった経済状況も改善しましたが、上記したように資源価格が高騰しているなかでのドル安で、俗に言う悪いインフレ、景気後退下のインフレが懸念される状況を招いてしまいました。
ここから解るのは、日本でも正しく量的緩和を行っても効果は上がらない、ということではないでしょうか。
ただし、通貨供給量は足りないと思っています。正常な円の流通量に正解はないですが、少なくとも世界中で保有されている円の金額が増えているのに、供給の増大がずいぶん間を於いた後追いになっています。これが円高やデフレを増長しているとは思いませんが、日銀は本来の仕事をちゃんとできてないのではないでしょうか。目につくような通貨の供給増は投資家の標的になりかねませんから、目立たないようにすることが必要ですが、それならば、今金融緩和で買い取っている国債をそのまま保有し続け、国債保有額を上げて原則に通りに通貨供給量をじんわり増やしたほうが良いです。

銀行を通じたおカネの供給を諦め、政府の事業によっておカネを溢れさせよう、という方法もあります。赤字国債を大量に発行して国が事業を行い、その国債の販売先を日銀にしよう、という方法で、国債の日銀引き受けという議論です。
日銀が引き受けるのだから国債の利率が跳ね上がることなく大量の資金を国が手に入れ、事業を行うことによって民間におカネが渡り景気浮揚・デフレ脱却・円安誘導という効果を期待します。これに対して日銀は海外からの国の信用が低下して国債の利率が高騰、今のギリシャのようになりますよ、と反対しています。
ワタクシは日銀の意見に賛成です。世界中に利息を求めて蠢くおカネは1京円といわれ、これは、弱ったものや小さいものがいないかヒツジを探して目を光らせるオオカミです。この案にかかわらず、非常時に行う手段を通常時に行うことは、オオカミに後ろ足のアキレス腱を曝しているようなものです。
ここまで読んでいただいて解るように、国際的な協調で行動しない限り、日本政府や日銀が単独で動いても世界中の投資家がそれを利用して利益を上げるために動き、効果を殺いでしまうだけです。

ワタクシは、その取引が自由である以上、その結果として円高になるのは仕方がないと考えます。しかも、自分の会社が儲かるように一生懸命働き、政府も正しく問題に対処した場合、経済や国の信任が高くなり円高の要素となるわけですから、円高が問題ではないようにする、円高が個人や企業にとって利益であるようにすることが必要だと考えます。
そのために、海外で円を保有している投資家はドルやユーロを円に変えて保有しているわけですから、その円を日本へ投資させることが良いと考えます。
例えば日本の国債を円で購入させる。財務省が一時日本の国債を海外の投資家が購入する可能性があるか確かめるために、海外の出張に繰り出していましたが、こうゆう遊び半分はやめて、真剣に国債の行商をする。まずは東日本大震災の復興資金に、赤字か特定目的かわかりませんが国債を発行することになりますから、これを全額海外で売りきってこい、というわけです。
また例えば、保有している円は次にいつ売るかわかりませんが、持っているだけでは利益を生みませんから再投資する必要がある。ならば、日本の株式市場に投資させる。どの道、短期の投資なので投資された株式の企業はそのおカネを成長のための長期投資に使えませんが、少なくても株価上昇にはなる。資産価格の上昇に貢献させることができれば、長期投資のための資金も呼び込めます。今の日本の株式市場にもこうゆうおカネが海外がら流入していますが、今以上にするためには株式市場を変える必要があります。投資単元を統一する、不透明な増資をさせない、わけても大阪・東京のようにいつまでも立会で取引していたころの名残で各地方にある取引所を日本単一の取引所に統合するなどやることは山のようにあります。
大阪・東京取引所の合併は確実に成されないといけないので、急かすことはできませんが、上場によって海外の取引所との提携を模索し東アジアのハブ取引所をめざす、というような寝言を言わず、少なくても日本の取引所を1か所に集約する、大阪・東京の次は、札幌・名古屋・福岡が合流できるよう正論を貫いてもらいたい。その上で、海外の企業を取り込むために上場基準を緩めるようなことをせず、日本の取引所に上場している企業ならば投資しても大丈夫だと思われればいいのです。中国企業による上場時の虚偽申告が散見され、中国やアメリカの取引所で問題になっていますから、安易な企業集めにはしるより、信頼をウリにしたほうが良いです。

話が逸れましたが、アメリカが「強いドルはアメリカの国益である。」と言い続けていた頃がありました。ドルが基軸通貨であるために世界中から投資を集めていたからですが、その逆に、基軸通貨であるために国内の消費を膨らませて海外のモノ・サービスを買いこみ、財政と経済の双子の赤字を抱えるという問題も起きました。
日本には世界中からモノ・サービスを買いこむだけの需要はありませんから、円は主軸通貨足り得ませんが、少なくとも何十年前から言われていたように円を国際化して「強い円は日本の国益である。」という状況にするのが本当に必要な、そして最もめんどくさい円高対策ではないか、と思います。

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